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​Positive Organ

【ポジティフ・オルガンについて】  

 ポジティフ・オルガンはパイプオルガンの一種です。パイプオルガンには主に「大オルガン」「ポルタティフ・オルガン」「ポジティフ・オルガン」の3種類があります。大オルガンは教会やコンサートホールに設置され、一度造ったら動かすことはできませんが、ポルタティフとポジティフは持ち運びが可能です。ポルタティフは肩からかけたり膝に置いたりして演奏します。音色を変化させるストップはなく、鍵盤の数も少なめです。歩きながら演奏できるため中世の行列でよく用いられましたが、次第にあまり作られなくなりました。

 ポジティフはポルタティフよりも少し大きく、演奏するときは机や床に置く必要があります。そのためラテン語で「置かれる」を意味するpositumからその名がつきました。中世以来ポジティフはキリスト教の礼拝で歌の伴奏を担い、室内楽でも活躍しました。しかし現代の教会では大オルガンが伴奏を務めるケースが増え、コンサートにおいても、古典派以降の作品ではあまり用いられないため実演に接する機会は少ないかもしれません。

 大オルガンは聴き手と楽器の距離が遠く音量も非常に大きいため、(良くも悪くも)威厳や圧倒されるような印象を受けます。その点ポジティフは、まるでひとりの人がそこにいるような温かみがあります。繊細な場面ではそっと風を吹き込む息づかいが聴こえ、速いパッセージでは顔を真っ赤にしてパイプを吹き鳴らすような力感的な音が聴こえるのです。こうした生命感は鍵盤楽器のみならず、オルガンの中でもポジティフ特有の魅力と言えるでしょう。              (鉢村優)

演奏 : 大木麻理

録音 : 聖グレゴリオの家 宗教音楽研究所

J.アーレント製 ポジティフ・オルガン(1996)

マニュアル51鍵 / 5ストップ

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